2イセタン サロン ド パルファン 2019」体験レポート【「香りと脳機能」セミナー】

“香り”が脳にもたらす反応は、私たちの心身にどのように影響してくるのでしょう?また、日常生活において“香り”を上手に活用するヒントとは?「ISETAN Salon de Parfum(イセタン サロン ド パルファン)」で開催された杏林大学名誉教授 古賀良彦教授による「脳と香りについてのセミナー」を紐解いていきます。

2019年11月08日更新

香水/フレグランス

fragrance-lover   FELICE ライター

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[1]香りのプロフェッショナルによるイベント・セミナー

今回で7回目を迎えた国内最大規模の香りの祭典「ISETAN Salon de Parfum(イセタン サロン ド パルファン)」が、今年も10月20日~10月23日まで新宿伊勢丹で開催されました。

カウンセリングや香りにまつわる様々なセミナーも多数用意されている中、私は「香りと脳機能」というセミナーを受講してきました。

この「香りと脳機能」は、杏林大学名誉教授 / NPO法人日本ブレインヘルス協会理事長 医学博士 古賀良彦教授による、日本フレグランス協会主催のセミナーで、香りが脳に与える影響を科学的に解説してくれるという興味深い内容なだけに、毎年大好評なんだそう。

それではそのセミナーの内容を、要略してお伝えしていきたいと思います。

[2]脳にダイレクトに伝わる「嗅覚」

脳には、感情や本能を司る「大脳辺縁系」と、理性的な思考を司る「大脳新皮質」という部分があり、「大脳辺縁系」には記憶を司る「海馬」という器官があります。

“香りは脳に直接届く”ということを聞いた方も多いと思いますが、それは五感の中で唯一嗅覚だけが「海馬」に直結しており、ニオイから「記憶」や「感情」といったものが呼び起こされるからです。

この「嗅覚」は、野生の動物にとっては食べ物を得たり敵から身を守るなど、生きていくために絶対必要な機能ですが、人間にとっては生死を分ける重要な機能ではないため、退化してしまったそうです。

ですが、今でも私たちは賞味期限が迫ったものをどうすべきか判断する際、必ずと言っていいほどニオイを嗅ぎますよね。

いくら退化したとはいえ、無意識のうちで危険かどうかを判断する材料として「ニオイを嗅ぐ」という行為は残り続けています。

[3]ストレスに対する香りの効果

「α(アルファー)波」は心身ともにリラックスした状態の時に発する脳波の一つですが、写真を見てください。

タバコはリラックスするために吸うという意見もよく聞きますが、タバコのニオイによりそのa波(図の赤やオレンジの部分)がグッと減少しています。

私も昔喫煙していましたが、自分が吸う分には良いのですが、他人の服に染み付いたニオイ、喫煙所のニオイ、新幹線や喫茶店の喫煙席のニオイなど、自分以外から臭ってくるタバコのニオイは不快でした。

我ながら勝手だなぁと思いますが、自分はリラックスできても、他の人にとってはα波が消滅してしまうぐらいにストレスフルなものなんですね。

年々喫煙できる場所も減り、愛煙家にとっては厳しい時代になったと思いますが、これだけタバコのニオイがストレスを与えているのだと証明されると、どんどん進む受動禁煙対策も当然だと言えるかもしれません。

また、タバコだけではなくカビも同様です。

カビ臭の発生によりα波が減少しています。

カビのニオイは激臭というわけではなく、タバコよりもニオイとしては弱めだと思いますが、不快指数は高く何だかイヤ〜な気持ちになりますよね。それもそのはず、α波がこんなにも減少してしまうとは!

「カビ臭い部屋」に住むなんてもってのほかということですね。

しかし、消臭剤を使うと無臭状態の時と同じぐらいまでα波が戻っています。

現在、各メーカーから様々な消臭剤が発売されていますが、ニオイだけでなくストレスも解消してくれるということになりますから、何かとストレスの多い現代人にとっては必要不可欠なものかもしれません。

[4]香りによる脳の活性化とリラクセーション効果

次は、香りがもたらすリラックス効果を見てみましょう。

レモン・ラベンダーの効果

蒸留水・レモン・ラベンダーのうち、α波が最も増えるのはラベンダーの香りで、逆に脳が活性化されるのはレモンの香りなんです。

写真内下の「P300」というのは、刺激が与えられて約0.3秒後に現れる脳波のことで、図:真ん中、一番濃い赤色は最も脳が活発に動いているという状態です。

レモンを嗅いだ時の脳は、濃い赤色の部分が拡大しているのがわかりますよね。それだけ脳が活発に動いているということになります。

逆にラベンダーは、濃い赤色が無くボヤッとしていて、蒸留水(無臭)よりも活発に動いている様子は見られません。なんだか見ているだけで眠たくなってきそうな脳波ですよね。

いかにラベンダーの香りがリラックス効果をもたらすかということが、よく現れていると思います。

そしてレモンの香りは、α波(図上:黒〜ピンクにかけてのグラデーション)が、蒸留水(無臭)よりも若干少ないのがわかります。

つまり、レモンの香りはα波(リラックス)が減少し、P300(脳の活発化)が増大するということ。

P300は情報処理機能も高めてくれるそうなので、仕事や勉強など、何かに集中して頭を使いたい時には積極的に活用したいところです。

アロマショップに行くと、ズラッと並んだアロマオイルそれぞれに香りと効能が書かれていることが多いですが、それもそのはず、香りによってもたらされる効果はバラバラだからなんですね。

香りが残りやすい“ハーブ”シャンプーの睡眠導入効果

あるメーカーが開発したハーブの香りがするシャンプーを使用した結果、ハーブの香りがしないシャンプーを使用した人よりも睡眠に入るまでの時間が短い=寝つきやすいという結果が得られたそうです。

つまり、寝つきの良いハーブの香りがあると、寝つきやすいということです。

多くの睡眠薬は「寝つきをよくする」ものだそうですが、このハーブのシャンプーも効果としては同じ。

何のハーブが使用されていて、どのメーカーのどんなシャンプーなのかはセミナーでは明かされませんでしたが、疲れていたり寝つきが良くない時は、自分がリラックスできるハーブや、ラベンダーのアロマオイルを炊いてみてください。

いつのまにか眠りについているかもしれませんよ♪

コーヒー豆の香りにもリラクセーション効果が

コーヒーの香りを嗅ぐと、なんとも言えない良い気持ちになりませんか?

心地良いと言うのか、リラックスできると言うのか、今までずっと、あのコーヒーの香りがもたらす気持ち良さの正体がわかりませんでしたが、ハーブやラベンダーだけでなく、コーヒー豆の香りにもリラクセーション効果があるとことが証明されているのだそうです。

だからコーヒーの香りを嗅いだ瞬間にあんな気持ちになるんですね。理屈ではなく、α波が増大しているんです。

しかも、コーヒー豆の種類によっても差があり、

ブラジルサントス
ガテマラ
ブルーマウンテン
モカマタリ
マンダリン
ハワイコナ

以上6種類で実験した結果、ガテマラの香りが最もα波を増大させたそうです。

私にとってもコーヒーは生活に欠かせない必需品で、毎日数えきれないほど飲んでいますが、コーヒーの味が好きなだけではなく、常にリラックスしたいという願望が、飲まずには(香りを嗅がずには)いられなくさせているのかもしれません。

そして思い切りリラックスしたい時は、みなさんもぜひ、少し贅沢にガテマラのコーヒーを飲んでみてはいかがでしょうか。

[5]香りによるその他の効果

異性間における香りの効果

「モテ香水」の人気ぶりを見てもわかるように、異性の気を引くために香りを纏う人は多いと思いますし、パートナーにも良い香りがする♪と思ってもらえるのは嬉しいことですよね。

さらに言えば、恋愛感情抜きにしても異性に不快な思いをさせない香りを纏うことは、円滑なコミュニケーションの一つとしてとても良いことだと思います。

セミナーでは、蒸留水(無臭)と、ヴァーベナの香りを嗅いだ時とでは、脳がどのような違いを見せるのかを解説してくださいました。

古賀教授によると、ヴァーベナの香りは、右の前頭葉が活性化され情緒が豊かになり、ワクワクするという気持ちが高まり、”お近づきになりたい”とか、”もっと親しく接したい”という感情が強まるのだそうです(!)。

これってつまり…!?

モテ効果がある香りと言えばローズやイランイランが挙げられることが多いので、ヴァーベナにそんな効果があるということには驚きました。

まさに恋愛にはもってこいの香り!

振り向かせたい意中の人がいるみなさん、すぐにでもヴァーベナ香水をGETしてみてくださいね♡

 

運動時の香りの効果

なんと香り運動能力にも影響を与えるそうですよ。

写真は、エアロバイク10分間の走行距離です。香りのついたテープを鼻に貼ってエアロバイクで走行した場合と、そうでない場合の比較─。

図を見てわかるように、香り付きテープを貼った時は、なんと倍以上の走行距離を叩き出しています。合法的なドーピングと言っても良いのではないでしょうか。

香りが運動能力にまで影響を与えるなんてとても驚きましたが、逆に悪臭の中でスポーツをしなければならないとなった場合、確実に士気は下がり、いつも以上の能力が出ないだろうなというのは容易に想像がつきます。

そう考えると、何か効果的な香りが運動能力を高めるというのも確かに説得力がありますね。

既にスポーツ界では様々な“香り療法”が取り入れられているのかもしれません。

[6]セミナーを終えて

約1時間のセミナーでしたが、“何となくそう思っていたこと”が脳科学的にも確証あるものであったり、全く知らなかったことを知れたりと、日常生活にも生かすことのできる実りあるセミナーでした。

そもそも“香り”脳科学的に突き詰める機会というのは一般的にはほとんどないですし、“学ぶ”という意味においても参加してとても良かったと思います。

一般の人にもわかるような丁寧で噛み砕いた解説なので、受け入れやすくとても理解しやすかったです。

古賀教授は脳に関する第一人者で、著書も出されていますので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。

>>古賀 良彦 教授についての情報はこちら


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