“死”が結んだピュアな恋と不思議な友情。 春に観たい映画「永遠の僕たち」。

余命わずかな少女、事故で両親を失い心を閉ざした青年、戦死した日本兵の幽霊。一見交わることのない3人が”死”を通じて出会い、やがて別れの時を迎えます。オシャレ心くすぐるファッションやアーティスティックな映像美、そしてピュア過ぎる恋の描写に胸がキュッとなること間違いナシ! 丁寧に描かれた至極のストーリーと、そこから感じる春の香りをご紹介します。

2020年03月24日更新

香水/フレグランス

fragrance-lover   FELICE ライター

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[1]「永遠の僕たち」について

「マイ・プライベート・アイダホ」や「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」などのガス・ヴァン・サント監督による、2011年公開の映画。

「アリス・イン・ワンダーランド」でアリス役を務め一気に脚光を浴びたミア・ワシコウスカと、怪優デニス・ホッパーのひとり息子であるヘンリー・ホッパー、そして日本から加瀬亮が出演し、大々的な宣伝はされなかったものの、映画ファンの間では話題となった映画です。

[2]主な登場人物と、ストーリー紹介


出典 eiga.com/movie/55280/gallery/2/

両親を事故で失い、自身も臨死体験をしたイーノック(ヘンリー・ホッパー)。事故後は叔母に引き取られましたが、心を閉ざし学校へも行っていません。

当然親しい友人もいませんが、唯一、イーノックにしか見えない、第二次世界大戦で戦死した日本兵の幽霊ヒロシ(加瀬亮)が友達と呼べる存在です。

叔母に対しても反抗的な態度を取り、赤の他人の葬儀に参列することを唯一の心の拠り所として、孤独で閉鎖的な生活を送っていたイーノックですが、ある葬儀でアナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会い、次第に仲良くなっていきます。

最初はガン病棟で働く職員と名乗っていたアナベルですが、実は職員ではなく患者の方で、余命3カ月なのだと告白します。

「3カ月あれば何でもできる」とイーノック。

一緒に過ごすにつれ、お互いの存在がかけがえのないものになっていく2人は、当然のように友情から愛情へ、友達から恋人へとなりました。

刻一刻と迫る“別れの時”と向き合いながら、懸命に生きる2人と、それをそっと見守るヒロシ━。

両親が死に、自分も3分間だけ死を体験したイーノックと、その死が迫るアナベル、既に死んでいるヒロシ。“死”によって結びつけられた3人は、これからどのような時間を過ごし、どのように生きていくのでしょうか。

[3]この映画のすごいところ


出典 eiga.com/movie/55280/gallery/2/

ストーリーだけ読むと、「余命宣告を受けた恋人と残された時間を過ごす、涙なしでは語れない青春恋愛映画」を想像してしまうかもしれません。

もちろん全くの間違いではありませんが、実際に映画を観ると、予想もしていなかった描かれ方がされています。

ベリーショートがよく似合うアナベルはとてもキュートで、ファッションもとてもオシャレ。イーノックは優しそうなイケメンで、アナベルともとても超お似合い。

まるでファッション雑誌から抜け出してきたかのような、文句のつけようのないカップルです。“死”を取り巻くストーリーだというのに、こんなにもスタイリッシュで可愛い画になるなんて。

映し出される自然や風景、アナベルが描くイラストに至るまで、登場する全てが美しく尊い。愛おしさで溢れかえっています。

そしてなんと言っても、イーノックとアナベルが出会ったことにより、それまで何一つ変わらない日常を悶々と過ごしていただけの2人が、どんどんキラキラと輝いていく姿、その距離の縮め方や過程の描かれ方が怖いほどリアルで、実生活でもこの2人は付き合ってるんじゃ?と思うほど。

内容自体は暗く悲しいものですが、陰鬱な感じはなく、“死”を受け入れ、1秒も無駄にせずめいいっぱい2人の時間を大切に、丁寧に過ごす…
なるほど、こういう描き方もあるのか、と感心させられっぱなしです。


出典 nenozero.info/restless-douga/

そしてヒロシ。“日本兵の幽霊”という謎の設定ではありますが、彼がいるといないとではこの映画は全く違ったものになったでしょう。
というより、ヒロシあってのこの映画。

最初から最後まで誠実で暖かいヒロシですが、彼もとても辛い「別れ」を経験した1人です。

この監督は天才ですね。まだ観ていない他の作品も観てみたくなりました。

[4]なぜ“春に観たい映画”なのか


出典 cinemovie.tokyo/restless/

先に説明した通り、内容は軽いものではありませんし、秋から冬にかけての物語で、映像からも寒さが伝わってきそうなほど寒々しい風景が映し出されたりもしています。

なのに、なぜこの作品が“春に観たい映画”なのか?それは、ラストシーンに尽きると思います。

冬が終わった後にやってくるのは、春。意外なラストシーンは、それを感じさせる絶妙な描写になっています。

ハッピーエンドでもなければバッドエンドでもなく、わかりやすい希望が与えられるような終わり方でもないのですが、確実に“暖かさ”を感じるラストシーン。

出会いの季節であると同時に別れの季節でもある春。

出会いと別れがほぼ同時にやってきたとも言えるイーノックにとって、アナベルと過ごした時間は短い春だったのかもしれません。

[5]そこから感じる春の香りとは


出典 eiga.com/movie/55280/gallery/2/

映画を見ている最中に、なんとなく香りのイメージは浮かんでいました。

途中までは秋っぽい香りで覆われていて、香水というよりは自然のままの木や葉っぱの匂い。それぐらい、自然が生き生きと美しく描かれているんですよね。

映画の内容を無視してアナベルとイーノックだけに特化すると、香りの幅は格段に広がります。

なんてったってオシャレで絵になる美男美女。アナベルが纏うならあの香りもいいな、イーノックはレディース香水もイケるだろうな、この香りをペアフレグランスにしても素敵だろうな…と、キュートでPOPでキラキラした香水が次から次へと浮かびます。

そして映画を観終わって・・・

ヒロシが出ていなければ、ジョー・マローンの「チェリーブロッサム」をチョイスしていたと思います。洋風で可愛らしく暖かい春の香りは、アナベル&イーノックにはもちろん、この映画全体を彩るのにもピッタリ。

でも、ヒロシが存在することにより「チェリーブロッサム」だと少し違和感が残るんです。

やはり「洋」の中の「和」というのは異彩を放つというか、インパクト大なんですね。特にヒロシは特攻服を着た日本兵です。そのパンチ力はなかなか消せるものではありません。

ジョー・マローンのブランドイメージとは程遠くもあります。

主役の3人にも、映画自体のストーリーにもよく馴染み、ただ1人“生きている”イーノックのこれからの人生にも優しく暖かく寄り添ってくれそうな香水。

私がこれしかない、と思ったのは『パルファン サトリ』の「桜 -Sakura-」です。

[6]「桜 -Sakura-」/PARFUM SATORI(パルファン サトリ)


出典 parfum-satori.com/?pid=16537731

トップノート:シソ チェリー
ミドルノート:サクラ、ジャスミン、ローズ
ラストノート:モス、ムスク、ウッディ、インセンス

桜餅のような柔らかさと甘み。春の陽光を感じずにはいられないぽかぽかした暖かさ。控えめで優しく、少し儚げな美しい和の香り━
それがこの「桜 -Sakura-」です。

これほどこの映画にハマる香水は、少なくとも私の中にはありません。監督に教えてあげたいぐらいです(笑)。

『パルファン サトリ』の香水はどれもこれもオリジナリティに優れ、◯◯っぽい、◯◯に似ている、ということが一切ありません。

日本が誇る唯一無二の美しい香りなんですが、「桜 -Sakura-」もその名の通り、決して“チェリーブロッサム”ではなく“桜”なんです。

桜の可憐さや、散ってしまうまで懸命に咲いている姿、人を和ます優しい色合いと、ほんのり漂う甘い香り・・・・その全てがこの香水に閉じ込められていて、その多くが「永遠の僕たち」とリンクします。

ハッピーエンドでもないし、希望が与えられるような終わり方でもないと前述しましたが、あのラストシーンにこの「桜 -Sakura-」を香らすことができたら、ほんの少しハッピーで、ほんの少し希望を感じるエンディングになるような気もします。

自分なりの香りを想像しながら、自分なりのラストシーンを解釈してみるのも良いですね。

 

[7]春はすぐそこ!香りも春仕様に

描いている季節は秋・冬なのに、春を感じさせる映画「永遠の僕たち」と、そこから感じる春の香り「桜 -Sakura-」、いかがでしたか?

日本には四季があり、寒い冬が終わると必ず春がやってきます。自然とテンションも上がる、一年でいちばん良い季節。

ファッションの衣替えと共に香水も春仕様にチェンジし、桜の季節を満喫したいものですね♪

そして今春もたくさんの良い香り良い映画に出会いたいと思います。

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